第3回
『中国金工の見方』

2014年6月

今回の名品 
上: 鏡三種  ページ下: 金飾

 中国では古くは夏時代(紀元前2070年頃)から現代までの長きに渡り、様々な金属工芸品を作り続けて来ました。夏から春秋時代くらいまではもっぱら青銅製の作品で、春秋戦国時代くらいから青銅に加えて鉄、金、銀の素材も使用されるようになりました。戦になれば金属の性質上、鍋や食器は溶かされ武器にされ、平和が訪れたら再び溶かされ鍋や食器にと何回もリサイクルされながら使われてきました。質の悪い銅は腐食し、鉄も錆びてすぐに朽ちてしまいますが、質の高い銅と金銀は何千年も朽ちずに現在でも多数残存しています。特に堅牢な墳墓や寺院が戦乱から宝物を守る為に掘った穴蔵、あるいは石窟寺院に隠された作品はなんと、木彫のみならず布でさえも何千年前のものでも、大変良い状態で出てきます。それらの作品は世界中の美術館で多数見ることが出来ます。今回は金属工芸の基本的な鑑定方法をお伝え致します。


-基本的共通事項-

 当然ながら本物は数千〜数百年間の時を越えて残って来ました。つまり、隠し護られる価値があったはずです。そのような作品は作行が良く、当然素材そのものが良いというのが大前提です。弱く、質の悪い金属作品ではそもそも隠し護られないでしょうし、何千年〜何百年も残らないでしょう。どのような金工作品であれ素材と作行の良さで9割判断できます。

 残りの1割は腐食具合や緑青、錆、土の付着状況が最終的な決め手になります。腐食具合や付着物の様子はその作品がどこにあったかによって変わってきます。石窟、墳墓、穴蔵、土中、それぞれに微妙に異なる腐食劣化を見せますし、当然付着物の差異もあります。例えば、仏教美術関係の作品の多くは石窟寺院、穴蔵から出てきます。高価な宝飾品、装飾品は貴族の墳墓から出ます。槍や刀のような普通の武器関係作品は戦場だった土中から出ます。従って、本物ならば作品のタイプによって自然な腐食、付着物が着くはずなのです。仏教美術作品には石窟か穴蔵の付着物、高価な宝飾品には墳墓の付着物、粗雑な作品には土中の付着物。といった具合です。例えば高価な宝飾品なのに土中の付着物が着いていることは不自然なのです。そういう場合は作品自体がよさそうであっても、十分な注意が必要となります。

次回は素材別、時代別の鑑定方法を詳しくお伝えします。