第2回
『石の見方』

2014年6月

 金石、つまり金属工芸と石、玉の作品は陶磁器よりも鑑定が困難だと言われています。科学測定もできない分野です。私どものような経験を積んだプロフェッショナルでさえ、しばしば断定できない作品と出会います。博物館に展示してある間違いのない作品でさえも、これが本物?と限りなく贋物のような作品もありますし、逆にこれが贋物?というほどに素晴らしい本物のような出来栄えの贋物もあります。では、石の真贋はどこで見ていけばいいのかを単刀直入にお伝えします。


今回の名品 
山東省博物館 北魏菩薩トルソー

 まず、石質です。良い作品は必ず良い石が用いられているはずです。彫りが良いのに石が悪いことは通常考えにくいです。まずは石そのものの良さをみます。次に何と言っても彫りです。本物は大体彫りが深く、刀の入れ方に迷いがありません。逆に贋作は刀の入りが弱く、失敗を恐れる余り線に力がなく、頼りない印象を受けます。また、できるだけ手抜きをしたい反面、自信がないことから簡単に彫れる余計な小細工や過度ないらぬ装飾が多いです。賑やかな方が高く売れますしね。お顔がついている場合は更に分かりやすくなります。顔は一見シンプルなようでいて本当に彫るのが難しいのです。顔は1ミリ違えば全然違う顔になります。トルソーにおいては、1ミリずれても違和感はそうそう感じません。まずは本や博物館で間違いのない作例を沢山見て感覚を養って下さい。そのあと、これらの鑑定ポイントを思い出してとにかく時間をかけて石仏を細部まで見つめて下さい。見る時は必ず明るい場所で、できれば自然光の下で見られると好ましいです。また、正面だけでなく、左右の側面、背面、断面全方向からしっかり見ましょう。側面、背面は作り手も油断が出る箇所なので特によくみて違和感がないか見ましょう。我々プロフェッショナルはそれらのポイントに加えて更に五つの鑑定ポイントを見ますが、これは企業秘密なのでここでは明かせませんが、一般の方におかれましては上記のポイントをしっかり押さえれば大丈夫です。


— まとめ —

石質、彫りの深さ、直感的な美しさを素直にじっくり見る。

見る時は側面、背面も必ず見せてもらう。

必ず明るい所、できれば自然光の下で見せてもらう。

筋肉のうねりと隆起は自然で理にかなっているか、骨の通りかたと盛り上がりは正しいか。人体として不自然がないかをみて下さい。指先の美しさ、伸びやかさ、お顔の優しさ、全身から溢れ出すオーラをじっくり見ましょう。更に踏み込んだ鑑定ポイントは当店に来て頂けたら実物を前に丁寧にお教え致しますので、お気軽にお越しください。