2015年1月29日


日本国内のオークション 

 今回はドメスティックオークション、日本国内のオークションについてお伝え致します。日本には「美術倶楽部」という美術商の組合があります。美術倶楽部には誰でも入れる訳ではなく、様々な要件があります。倶楽部会員からの推薦、派閥への加入、理事からの加入の承認を経て、加入金として美術倶楽部の株(300~500万円)を買い、ようやく倶楽部員になれます。五都美術倶楽部と言って、東京、大阪、京都、名古屋、金沢に美術倶楽部がありますが、東京と大阪の美術倶楽部が特に有名で規模も大きいです。(弊社は東京、大阪両美術倶楽部に所属しております)倶楽部に所属しますと、まず一定の信用を業界内外で獲得することができます。次に、倶楽部員しか参加できないスペシャルなクローズドオークションに参加できます(名品が沢山出ます)。

  日本のオークション(交換会)は基本的に全てクローズドです。つまり、一般の方、または業者であっても会のメンバーでない方は参加できません。これは、欧米のオークションとは大きく異なる部分です。これにより、お客様に我々の仕入れ値がバレずに商いがしやすくなるわけです。交換会には、本番、成り行きの2つの種類があり、本番は売主の希望価格に達しない場合は売らなくても良く、成り行きは例え100円だろうと、ついた値段で出品者は売らねばならない方式です。本番は売り手が引いて不成立も多いですから、競りもあまり盛り上がりません。一方の成り行きはついた値段で必ず売り切りなので、競りも盛り上がります。出品者は出す品物をよく見極めて、どこの交換会に出すか、本番か成り行きかを決めます。ピタリとハマると良く売れますが、スカしてしまうと大損になってしまいます。同じ品物でも、出す会、本番、成り行きが違うだけで数十万も数百万も価格が違うから、出品には細心の注意を払わねばなりません。

  交換会のありがたいところは、品物をすぐに現金に換金できることです。交換会は大小さまざま、種類も様々ですが、東京の主だった会だけでも毎月10以上は必ず開催されていますから、急に資金が必要になった際も真面目な作品ならば、とりあえず急場を凌ぐ資金をすぐにつくることができます。しかし、売り急ぐと大抵の場合は自分の希望値には遠く及ばない、惨憺たる結果で買い叩かれてしまいます。いくらで売れるかをほとんどコントロールも予期もできない部分がリスクです。時に小売よりも高く売れる場合もあるし、時に仕入れ値よりも安くしか売れない時もあります。

  そんな交換会ですが、昨今の国内美術商の世代交代により、チョットした変化が生じています。高齢化により有名美術商、パワフルな美術商が引退したり、天に召されたりすることがここ数年相次いでおり、交換会にかつてのような活気、元気がないのです。非常に大きな一つの時代の転換点を感じます。このままでは有力な参加者が減り、交換会では品物があまり売れないようになり、出品が減り、最終的には会が減退、消滅してしまう懸念が出てきます。それは困りますから、ではどうなるかと言いますと私は欧米のようにオープンオークション、一定の要件を満たせば、一般の方でも参加できるような方式になるのではないかと考えています。(古裂会などすでにそうしたオークションもある)確かにそうなりますと、参加者は格段に増えます。しかし、諸刃の剣でオークションで買う人が増える一方で店舗でお買い求めになる方は確実に減るでしょう。ただ、オープンオークションが主流の欧米を見ますと、オークション会社も古美術店も一応共存しておりますから、多分成り立つシステムなのだと思います。日本の古美術業界、交換会の在り方が大きな転換点にさらされていることは間違いありません。今後、益々動向に注視せねばならないでしょう。